2020.10.03

【コラム】日露文化オーガナイザー・中川亜紀の
「お皿の上のロシア」第5回『シャルロットカ』

Columnist

中川亜紀

日露フードオーガナイザー、a.k.i. kitchen project代表。日本人向けロシア料理教室、およびロシア語話者向け和食教室を主宰。東京都教育委員会委託ロシア語児童の日本語講師およびサポート員として都内の小中学校にて指導もしている。「食は異なる文化の人々をつなぐ」をテーマに、日本とロシア(および旧ソ連圏)を食でつなぐ活動を続けている。 

(写真:りんごのケーキ「シャルロットカ」)


日本とロシアを股にかけて、「食」をテーマにした文化交流活動を行っている日露文化オーガナイザー・中川亜紀さんの料理と文化に関するコラム「お皿の上のロシア」全12回シリーズの第5回です。



前回までの連載記事はこちらから
(以下、中川さんのコラムです)
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9月、10月は例年であれば、私もロシア出張に行く時期です。この9月の出張で難しいのが日本との温度差です。
日本ではまだ蒸し暑さの中、汗をかきながら、スーツケースに帽子、手袋などを詰め、日本だと真冬仕様のコートを出し、ブーツを履いて空港に向かいます。
ロシアでは、モスクワでさえこの時期はコートが欠かせず、パンプスなど履いていようものなら 「なぜそんな夏物の靴を履いているの」と聞かれるほどです。

でもそれはつまり、美味しいものも増えてくるということ。
夏の間に収穫したきのこを干したり瓶詰めにしたり、ベリー類は冷凍やジャムになっています。

そして夏の間、日差しをたくさん浴びて過ごしたダーチャ(週末に過ごすための郊外の畑付き一軒家)では、りんごがたくさん実っています。
この時期になると、ダーチャなど持っていない駐在の日本人でも「そろそろりんごの時期なんだな」と分かるくらい、近所の人から「ダーチャで採れたりんごのお裾分けよ!」といただいたりします。
日本のように大きくて艶のあるものではなく、虫食いや小ぶりで色もまばらだったり、傷ありだったりしますが、自然のエネルギーそのもののようなバケツいっぱいのりんごです。
皮をむくなんてとんでもない(ロシアでは概して果物の皮は剥きません)。皮ごと栄養しっかりいただきます。
人によっては種や軸も食べる人も少なくありません。
郊外に向かう道路脇では、バケツにもられて数百円ほどで、日本の田舎の無人野菜販売所のごとく売られていることも。


いくつか種類がありますが、アントーノフカという種類がロシア人もお気に入り。
日本の昔の紅玉にはあったような強い酸味と香りがあり、ケーキやジャムにするにはぴったり。
うちの子供たちはその酸っぱさにはまって、そのままでもかじっていました。
また、このアントーノフカを使った素朴なホームメイドケーキ・シャルロットカは、それぞれの人のレシピがあります。 美しい料理を作るプロのシェフが、ささっと我が家のキッチンで作ってくれたものから、友人宅に招かれて、「たくさんりんごが採れた!オーブンはないけどフライパンで作れるかやってみよう」とチャレンジしたものまで、私の中のシャルロットカの味の思い出は様々、そしてそれぞれが香り豊かで思い出しただけで甘酸っぱい味が口に広がるようです。


ロシアではナッツ類もよく食べられることもあり、くるみやアーモンドを加える人も多いです。
またスパイスもよく使うので、シナモンやカルダモンもお好みで。
日本の甘いりんごにすっかり慣れてしまった私ですが、やはりお菓子作りはこのアントーノフカ。
むしろ日本で焼く時には、このアントーノフカにかなう酸味と香りのりんごを見つける方が難しいかもしれません。
もしそんなりんごを見つけたりいただいたりしたらぜひ皆さんも、このシャルロットカを気軽に作ってロシアの秋を感じていただければと思います。


〇 りんごのケーキ“シャルロットカ”のレシピ


【材料】

りんご 300g
レモン 1/2個
卵 1個
グラニュー糖 100g
バニラエッセンス 小さじ1/2
生乳ヨーグルト 100ml
準強力粉(または薄力粉と強力粉を混ぜる) 160g
ベーキングパウダー 小さじ1/2
サラダ油(あればひまわり油) 50ml

【作り方】

1.りんごは洗って芯を取り、小さく切る。切ったりんごはレモン汁約大さじ1をまぶす。

2. 卵はボウルに割り入れて砂糖とバニラエッセンスを加えて混ぜる。

3. 膨らんで来て白っぽくなるまで混ぜる。ケフィールを加えて混ぜる。

4. 小麦粉とベーキングパウダーをふるいにかけて、卵液に加える。均一になるように丁寧に混ぜる。

5. サラダ油を加えて混ぜる。レモンの皮をおろし入れてさらに混ぜる。

6. 型にバターを塗って小麦粉をふりかける。

7. 生地の半量を型に流し入れ、切ったりんごの半量を重ねる。さらに残りの生地を流し入れ、その上に残りのりんごを乗せる。その上にアーモンドスライスを振りかける。

8. 180度に余熱したオーブンで50-60分焼く。中心を爪楊枝でさして、何も付いてこなければ焼き上がり。

9. 粗熱が取れたら、お好みで粉糖をかける。

 






文/中川亜紀/日露文化オーガナイザーとして、ロシア料理の研究のほか、ロシア語通訳・ロシア語児童支援などの活動を行っている)

中川亜紀さんのHPはこちらから:http://www.aki-russia.jp/

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