2020.07.30

【コラム】日露文化オーガナイザー・中川亜紀の
『お皿の上のロシア』第3回『アクローシュカ』

Columnist

中川亜紀

日露フードオーガナイザー、a.k.i. kitchen project代表。日本人向けロシア料理教室、およびロシア語話者向け和食教室を主宰。東京都教育委員会委託ロシア語児童の日本語講師およびサポート員として都内の小中学校にて指導もしている。「食は異なる文化の人々をつなぐ」をテーマに、日本とロシア(および旧ソ連圏)を食でつなぐ活動を続けている。 

日本とロシアを股にかけて、「食」をテーマにした文化交流活動を行っている日露文化オーガナイザー・中川亜紀さんの料理と文化に関するコラム「お皿の上のロシア」全12回シリーズの第3回です。


前回までの連載記事はこちらから
(以下、中川さんのコラムです)
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ロシアは、雪に閉ざされたイメージが強く、
よく「夏はあるんですか?」と聞かれることがありますが、
マイナス40度になるシベリア地方でさえ、夏は35度を超える日があります。

また、その夏は日本に比べると1ヶ月ほどと短いため、ロシア人は夏の到来を喜び、この季節にしか楽しめない物を満喫します。

ロシアの夏といえば・・・

・“クヴァス”

(写真:中川さん特製の『クヴァス』)

黒ビールのような微炭酸、微アルコールの発酵飲料。
独特の甘みと黒パンの香りで苦手な外国人も多いですが、慣れてしまうと、
夏の空気感を感じる頃に恋しくなる味です。


・カフェの「夏のベランダ」

夏以外は寒さのためお店もしっかりと閉ざされていて、大きな窓のお店も少ないロシアですが、夏になると、多くの店が、通りにカフェ席を設けます(※歩道が通りにくくなるのはお構いなし(笑))。

近所のカフェが外にテーブル席を起き始めると「夏が来たな」とわくわくします。


・自家製リモナード

炭酸入りのボトル入りレモネードを想像しがちですが、ロシアの飲食店の夏メニューには、そのお店自慢の自家製リモナードが載ります。
レモン味だけでなく、その他の柑橘、ベリー類、ジンジャー入り、フレッシュミントがたっぷり入った物、おすすめはスイカ。

大きなカラフェで2~3人前で注文することもできて、自分たちでつぎ分けながら、のんびりとベランダ席で爽やかな夏の空気を満喫するのが、最高のロシアの夏の過ごし方。


・モヒート

本来は南米のものですが、実はロシアでも代表的な夏のドリンク。
なんといっても、フレッシュハーブを料理にも日常的に使う文化圏なので、モヒートに入るミントの量も半端ないです。

このモヒートに慣れると日本で出てくるものは物足りない。

ミントとライムの定番以外にも、オレンジやジンジャーを加えた物、ベリー入りなど、バリエーションも多く、また最近のロシア人はアルコール依存にも敏感なため、ノンアルコールのものも、ほぼ、どのお店にもあります。


・冷製ボルシチ(“スヴェコリニク”)

いつものボルシチを冷やした物ではなく、作り方も全く別。

クリアでさっぱりしたビーツの真っ赤な汁に、きゅうりなどの生野菜と茹たまご、青ねぎ、最後にサワークリームと混ぜるとピンク色が美しい、サラダ感覚の冷製スープです。


・“アクローシュカ”

(写真:冷たいスープ『アクローシュカ』。レシピは記事下部にあります)

冷製ボルシチと同じ作り方ですが、ベースとなる液体が、上記のクヴァス、また
ケフィール(※ヨーグルトのような乳酸菌飲料)になります。

ご紹介するレシピは、あっさりしたチキンブイヨンを使っていますが、
ブイヨンではなく、を使うと、10分で作れて、ビタミンたっぷりな夏に最高のサイドディッシュに。

朝ごはんはこれにパンだけでも十分。
日本ではケフィールは手に入りにくいですが、生乳ヨーグルトがほぼ近い味わい(※乳酸菌の量は負けるが)なので代用できます。

たっぷりとディルとネギを入れるのがポイント。
上級者は発泡水を使って微炭酸の効いた独特な味わいのスープにぜひハマって欲しいです。


〇 冷たいスープ“アクローシュカ”のレシピ


【材料(約4人分)】

ヨーグルト 400ml
鶏胸肉のブイヨン(冷やしたもの) 400ml
(※ブイヨンの材料:鶏胸肉 半枚、ローリエ、セロリの葉や玉ねぎ、人参などの残り野菜 適宜)
きゅうり 1本
ラディッシュ 4~6個
セロリ(あれば) 1/3本
茹で卵 4個
塩 小さじ1/2
こしょう 適宜
小ねぎ 1~2本
ディル 2~3枝

【作り方】

1.鍋に鶏肉と塩小さじ1/2を入れ、ローリエ、セロリの葉や玉ねぎ、人参などの残り野菜と一緒に水から茹で、ブイヨンを取る。

2. ブイヨンを冷やして、浮いた脂を除く。茹でた肉は冷ましておく。

3. ヨーグルトとブイヨンを合わせる(お好みの濃度で良い)。

4. ブイヨンで使った肉は1㎝角に刻む(肉なしでも良い)。ブイヨンなしの場合は、ロースハムなどでも良い。

5. きゅうりはたてに4等分し、1~2ミリの厚さに刻む。ラディッシュもきゅうりと同じくらいの大きさに刻む。

6. ラディッシュの半量と、それ以外の野菜と肉全量、みじん切りにした茹で卵2個分を、に混ぜる。
味見をしてみて、塩こしょうで味を調節し、冷蔵庫で冷やす。

7.皿に盛り、上からラディッシュの残り、茹で卵を半分に切ったものと刻んだ小ねぎとディルを散らす。好みで黒こしょうをかける。






(文/中川亜紀/日露文化オーガナイザーとして、ロシア料理の研究のほか、ロシア語通訳・ロシア語児童支援などの活動を行っている)

中川亜紀さんのHPはこちらから:http://www.aki-russia.jp/

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