【コラム】ロシア語講師の教える
『ロシアに関係するお仕事紹介』第3回『ロシア語講師』

東京都内でロシア語講師や通訳・翻訳などのほか、YouTuberとしても活動されている福田知代さん『ロシアに関係するお仕事紹介』第2回です。



前回までの連載記事はこちらから
(以下、福田さんのコラムです)




(写真:福田知代さん)

「日ロドライブ」の読者のみなさん、こんにちは。福田知代です。
連載も、今回で三回目になりました。

このシリーズでは、ロシア語を活かすことのできるお仕事のうち、わたしがフリーランスとしてこれまで経験してきた仕事や立場について、順番にお話ししています。
これまでに、「翻訳」のお仕事と「映像翻訳」のお仕事についてお話してきました。
ご興味のある方は、どうぞそちらもご覧になってみてくださいね。



さて、わたしは大学と大学院でロシア語を専門的に学び、現在はロシア語関連のフリーランスとして働いています。
これまでに10種類くらいの立場を経験してきましたが、その中でも、わたしは何者か、わたしにとっての「軸」は何か、と問われた場合、
迷わず「ロシア語を教える仕事」と答えています。


わたしは普段は、高校でロシア語の講師をしています。
また、週に一度、大人の方向けのロシア語教室(※現在は新型コロナウイルスの影響で、しばらく休講しています)を運営しているほか、プライベートレッスンの依頼があればお引き受けしたり、過去には大学でもロシア語を教えたりなどしていました。
YouTubeでも、ロシア語の先生をしています。


もともと、わたしの両親がともに教員免許を保有しており、父は中学校の英語科の教員でした。
母は保育士でしたが、中学高校の国語科の教員免許も持っていました。
ですから、わたしが大学で教職の授業を履修するのは当然の流れだったわけです。
専門であるロシア語などの授業のほかに、教育学や教科教育法の授業の単位を取得することは楽なことではありませんでしたが、発達心理学や認知心理学など、「人」を知るための学問は非常に興味深いものでした。


いつか詳しくお話できればと思いますが、わたしは、大学と大学院のときに、20世紀前半のソ連で活躍した風刺作家ミハイル・ゾーシェンコの研究をしていました。
ゾーシェンコの作品には、当時の最先端の心理学や精神分析学、生理学、医学や、今でいう「セルフ・コントロール」の考えが随所に見られ、ゾーシェンコの研究のために自分でそれらの学問を少し勉強していたため、教職の心理学の授業は研究とも多少リンクしていました(※ちなみにわたしは、大学院のときに、電気通信大学の大学院生たちと一緒に、大脳生理学の授業にも出席していました)。

学部のときには、ほかの授業との兼ね合いで、中学高校の英語の免許のみを取得しました。
教える立場としてはまだまだ半人前にも満たない状態でしたが、初めて人前で教えるという経験をしたのは、教育実習のときの英語の授業だったわけです。


その後、わたしは修士課程に進みました。
わたしの大学の大学院では、地域の方々に向けて大学院生がそれぞれの専攻語を教える「サマースクール」というものが、毎年夏に実施されています。
わたしも、修士課程の一年目からサマースクールでロシア語の授業を担当しました。
ロシア語を教えたのは、このサマースクールでの授業が初めてでした。
幸い、教職の授業を通して、人にものを教える上で必要となる知識を得ていましたし、英語ではありますが、教育実習をした経験もありましたので、それらの知識と経験は、ロシア語の授業をする際にも大変助けとなってくれました。
都立高校公開講座や、「YouTubeでロシア語」の入門から初級向けの動画で使用している自作のテキストは、わたしが修士課程一年生のときに作成したものです。

サマースクールの期間の最終日に、授業にいらっしゃっていて仲良くなったおじいさまから、
「年に一度しか教えてもらえないのは、七夕みたいでさみしい。ぜひ、普段から習いたいな」
とのお声を頂戴し、その年の秋に、同級生と一緒にロシア語教室を立ち上げました。
サマースクールでわたしたちの授業を受けてくださった方々の中から数人が、このロシア語教室に通うようになってくださったのですが、今思えば、22歳のただの「ひよっこ」に毎週ロシア語を習いに来てくださる方々がいたなんて、本当に恵まれていたなと思います。


学部のときにはほかの授業との兼ね合いで英語の免許しか取得できませんでしたが、修士課程のときに追加で必要な単位を取得し、ロシア語の教員免許の取得を目指しました。
ですが、将来教師になるつもりはなく、修士一年生の後半から就職活動をし、修士二年生の夏前に一般企業の最終面接を受けました。
ちょうど同じころ、ロシア語科教育法の授業で、先生から、「都立高校でロシア語の非常勤講師を引き受けてくれる人を探しているのだけれど、どうかい」とお話がありました。

最終面接の結果が数日以内に出るというタイミングに、まったく思いもよらない方向からお話があり、大変迷いましたが、
もともと、翻訳のお仕事をしたいという思いがあったからこそ、大学三年生のときから翻訳のお仕事を始めたわけなのに、一般企業に就職したらその道は絶たれてしまうだろうし、始めたばかりではありましたが、ロシア語教室に通ってきてくださる生徒さんたちもいる。
いろいろと考え、悩んだ末に、一般企業の内定はお断りし、都立高校のロシア語の非常勤講師を引き受けることに決めました。


こうして、わたしは修士課程修了後にフリーランスとして社会に出ることになりました。
前回のコラムでは映像翻訳のお仕事について書きましたが、修士論文が佳境である時期にあえて初めて映像翻訳の依頼を受けることにしたのは、このような経緯で、「学生が終わってすぐフリーランス」とすでに腹を決めていたからでした。


2010年に都立高校でロシア語の非常勤講師として勤め始めました。
その後、非常に運のいいことに、2012年からはさらに二つの私立高校でロシア語の非常勤講師をすることになりました。
日本全国でロシア語の授業のある高校は、全部で30校ほどと言われています。
東京都内では、第一、または第二外国語としてロシア語が開講されている高校が3つ、国際理解の科目の枠内でロシア語・ロシア文化を学ぶことのできる高校が1つあります。
運よく、そのうちの3つで非常勤講師をすることができていたため、関係機関からお話を頂戴しやすく、さまざまな国際交流プログラムにたくさんの生徒たちを参加させることが可能となりました。


次回のコラムでは、ロシア語を活かすことのできるお仕事シリーズの中休みとして、これまで学校で実施してきた「国際交流プログラム」について書いてみたいと思います。


2014年からは国立大学でも、非常勤講師としてロシア語を教えることになりました(※「たぶん最年少記録!」と言われました)。
そのほか、グループレッスンに講師として招いていただいたり、プライベートレッスンをお引き受けしたり、都立高校の公開講座を受け持ったり、2017年からはYouTubeでレッスン動画を配信したりなどしています。


最後に、いつものように、ロシア語講師になる方法をまとめてみます。


〇 ロシア語講師になるには

まず、高校でロシア語の教師になるためには、よほどの特例が適用されない限り、ロシア語の教員免許状が必須です。

免許状を取得するための教職の授業では、教育学や教科教育法、心理学、カウンセリング、道徳教育などなど、さまざまなことを学びますが、「先生」として人の前に立つ上で、非常にためになるものばかりでした。

学校以外の場でロシア語講師になるためには、必要となる資格は特に定められていません。
大学の場合は、専門分野の研究業績が重要視されます。

いずれにしても、まずは、自身のロシア語能力が確かなものであること。
かつ、教えている相手の理解の度合いを瞬時に判断したり、つまずきそうな箇所でスムーズにサポートしたり、興味を引き付けたり、学習意欲が継続するよう工夫したりなど、細やかな配慮ができると、なおよいでしょう。



以上、今回はわたしのお仕事のうち、ロシア語講師のお仕事について書いてみました。いかがでしたでしょうか。次回もどうぞお楽しみに。






(文/福田知代/ロシア語講師、翻訳家、通訳、YouTuber)

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