日本とロシアを股にかけて、「食」をテーマにした文化交流活動を行っている日露文化オーガナイザー・中川亜紀さんの料理と文化に関するコラム「お皿の上のロシア」全12回シリーズの第2回です。
前回までの連載記事はこちらから
(以下、中川さんのコラムです)
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日本でもコロナウイルス による緊急事態宣言が解除され、海や山へと飛び出したくなった人がたくさんいると思います。
日本に比べると事態が深刻とされるロシアですが、彼らは日本人の何倍も、海や山へ飛び出したい気持ちを抑えて、ロックダウンの日々を頑張っていたに違いありません。
日本では桜が咲いてすでにソワソワし始める頃も、ロシアはまだ冬の名残、雪が降ることもあるくらいの寒さ。
でもそのロシアの長い冬が終わり、春の日差しと20度を超える温かい外気を感じたら、彼らの頭の中は(口の中は?)ロシア風バーベキュー”シャシリク”でいっぱい。
人々が一斉 に「シャシリクの季節だ!」と叫び出す様子は、まるで”シャシリク遺伝子”のようなものが彼らの DNAに組み込まれているのでは、と思うほど。
ロシアは、多くの人が想像する通り、街を離れて郊外に出ると広大な自然が広がります。
私もモスクワ出張の際には仕事の合間の数日、モスクワの友人一家の郊外の家”ダーチャ”を訪ね、 そこで一緒にシャシリクを楽しめる時間を大切にしています。
モスクワ市街地から車を走らせること3-4時間。そこは見渡す限りの原っぱと森、大きな湖。
連休中でもその周辺にほとんど人は見当たりません。
外でシャシリクを楽しんだ後は、湖で泳いだり、バーニャと呼ばれるロシア式サウナに入ったり、夜はお母さんの手作りボルシチなどの手料理を一家と友人たちで囲みつつ、ゆっくりと過ぎる夜を楽しみます。
さて、ロシアのお肉事情ですが、日本同様に牛豚鶏肉を中心に、鴨、羊、うさぎなども食べられます。
牛肉は、近年日本の「ワギュー(和牛)」も知られるようになりましたが、やはり赤身の噛み応えのあるものが人気。また中央アジアの人も多いため、羊肉もとても人気です。
このシャシリクは、元はコーカサス地方の料理です。
ロシアの中でもコーカサス地方は、スラブ系ロシアとは異なる文化を持っており、料理も、 ジョージア(旧グルジア)料理などで知られるように、シルクロード経由のスパイスがふんだんに使われます。
パクチーなどのフレッシュハーブも多く添えられ、またコーカサスでよく食されるザクロを散らしたり、どろっとしたザクロソースをかけることも。
シャシリクの特徴は、お肉類を一晩かけてしっかり下味をつけること。
そして炭火で香ばしく焼き上げること。
日本でもぜひ、炭火のバーベキューで、お家ならオーブンではなく、
魚焼きグリルをおすすめします(持ち手部分が焦げないように鉄串を使ってください)。
下味には、お肉を柔らかくする酵素を含む玉ねぎだけでも良いですが、現地の友人に教えてもらったキウイなどもおすすめです。
お肉も野菜も付け合わせもお好みで選びながら、日本の長すぎる夏を、
ロシア人が短い夏を愛おしそうに満喫する気持ちで楽しんでみてください。
○ ロシア風バーベキュー “シャシリク” のレシピ
【材料(約4人分)】
お好みのお肉2-3種類(鶏肉、豚肉、ラム肉など)またはサーモン 1kg
生乳ヨーグルト 400ml
玉ねぎ 中2個
にんにく 1かけ
キウイ 1個
パプリカパウダー、チリパウダー、クミン、ターメリックなどお好みのスパイス 適宜
ガス水 200ml
塩 小さじ1
パプリカ 1個
ミニトマト 8個
ズッキーニ 1本
紫たまねぎ 1/2個
パクチー お好み
ディル お好み
【作り方】
1. 玉ねぎ1/2個分とキウイ1個、にんにくを下ろし金でピュレ状に下ろす。
ヨーグルト、 ガス水、スパイス、塩を混ぜ、マリネ液を作る。ジップロックなどの密閉ビニール袋に入れる。
2. 肉は一口大に切り、1の袋に入れて、もみこむ(もしくは冷蔵庫で半日寝かせる)。
3. 野菜も一口大に切る。
4. マリネした肉と野菜を順番に串にさし、炭火や魚焼きグリルなどで焦げ目がつくまで焼く。(オーブンではなく、できるだけ直火が良い)
5. スライスして水にさらした紫玉ねぎ、パクチーやディルなどの生ハーブを添えて食べる。
(文/中川亜紀/日露文化オーガナイザーとして、ロシア料理の研究のほか、ロシア語通訳・ロシア語児童支援などの活動を行っている)
中川亜紀さんのHPはこちらから:http://www.aki-russia.jp/