日本・ロシアに縁をもつ「人」にスポットを当て、その「人」を紹介、そして「人」を通じて、ロシアの魅力や日本とロシアの関わりなどを、車でドライブするような冒険心を持って発信していく「日ロドライブ」。
第8回は東京在住の現役大学生で、ロシアとの交流を行うインカレサークル、「日本ロシア学生交流会」の前代表・泉谷知輝さんにお話を伺ってきました。
泉谷さんは現在早稲田大学文学部ロシア語ロシア文学コースの2年生で、大学ではロシア語やロシア文化を学びながら、日本とロシアの学生交流を目的としたインカレサークル、日本ロシア学生交流会にも所属しています。
そんな泉谷さんに、ロシア語やロシア文化に関心を持ったきっかけやロシアの魅力、日本ロシア学生交流会の活動についてのほか、来月2月23日、24日に東京都内で、日本ロシア学生交流会が中心となって開催するイベント、ロシア・ユーラシア文化祭「プラーズニク」についてなど、たくさんのことを楽しくお伺いしてきました。
--今日はよろしくお願いします!さっそくなんですが、泉谷さんのちょっとした自己紹介みたいなものをお願いしてもいいですか?
早稲田大学文学部ロシア語ロシア文学コース2年の泉谷知輝といいます!昨年の11月に20歳になりました。
高校時代から現在までアメフト部に所属していて、日本一を目指すモチベーションでアメフトをしています!
父が、昔アメフトをしていた影響で、幼い頃から試合観戦に連れて行ってもらっていて、興味を持つようになったことがアメフトを始めたきっかけです。
ロシアに関わる活動としては、もう代替わりしてしまってるんですが、昨年1年間、日本ロシア学生交流会というインカレサークルの代表を務めていました。
--アメフトもされているんですね〜!日本ロシア学生交流会で代表をされていた泉谷さんが、ロシアに興味を持つようになったきっかけはなんだったんでしょうか?
宇宙飛行士で油井亀美也さんという方がいらっしゃるんですが、父の大学の同級生という事もあり、幼いころに講演会に連れて行ってもらったりして、宇宙に関わる仕事に興味を持ったんです。
なので、幼いころから宇宙飛行士や宇宙関係のエンジニアになりたいなと思っていて。
将来、そうした仕事につくことを目標に、高校受験の際、自分のやりたいことができるような高校を調べて受験したんですよ。
そのため、理系の学科があること、また、宇宙に携わる仕事につくには、ロシア語が役に立つと思っていたので、第二外国語でロシア語を学べる学校であることを志望校の条件に入れていたんです。
ただ、ロシア語に関しては、このときはまだそんなに関心があったわけではなくて、あくまで副次的なものだったんですけどね。
あとはアメフト部があるというのも絶対条件に入れてました(笑)
こうした条件を色々総合して考えた結果、早稲田大学高等学院が自分が一番やりたいことができる高校だと思って入学したんです。
そこでロシア語を学ぶ中で、ロシアに関心を持ったという感じですね。
--今回のインタビューの肝にもなると思うんですが、ぜひ日本ロシア学生交流会の活動についても教えてください!
日本ロシア学生交流会は日本とロシアの学生交流をメインとして活動している団体です。
毎年10人くらいの学生で、ロシアのノヴォシビルスクとリャザンにある支部を訪問する「訪ロ企画」と、それらの支部のロシア人を10人ほど日本に迎えて、東京都内の散策をするという「訪日企画」の2つの活動をメインに行っています。
これは日本ロシア学生交流会が約30年前に創設されてから、ずっと継続している活動ということもあって、会の一大イベントですね。
日本ロシア学生交流会の活動の一番の魅力はホームステイだと思っています。
というのも、1人でロシアにホームステイに行ったり、1人でロシア人をホームステイとして受け入れたりするのは、手続きの煩雑さなどから、とても難しいと思うんですが、日本ロシア学生交流会に所属しているだけで、煩雑な手続きを抜きにして、双方向のホームステイ体験ができてしまうんですよ。
所属することによって、会費はかかるんですけど、飛行機代以外の、ホームステイに関する費用などは無料になるので、お得ですよ。
ホームステイの期間は10日間ほどで、支部とは長年の交流を行っていることもあり、会の学生たちがロシアに行ったときには、支部の学生たちが滞在中の面倒を全て見てくれますし、支部のロシア人たちが日本に来たときには、会の学生たちが日本滞在中の面倒を全て見ています。
このように長年にわたって、相互に至れり尽くせりの関係を築いていることが、関係する費用等がほとんどかからない理由だと思っています。
さっき言った「訪ロ企画」と「訪日企画」は、毎年1回ずつ行っている大規模な行事なんですが、それ以外でも、支部のロシア人たちから訪日したいとの希望があった際には、随時受け入れを行うなど、コンスタントに相互訪問の活動を行っていますよ!
--なにかとおもてなしがあるのは、相互訪問する上でとても心強いですね〜!ちなみに今、「日本ロシア学生交流会」の会員数は何人くらいなんですか?
日本ロシア学生交流会はインカレサークルなので、東京都内を中心に関東中のロシア好きの学生たちが集まっていて、現在は110〜120人くらい会員がいます。
その内の8人で構成される幹事団で運営を行っているんですが、大人数なので、なかなか会員全員を把握するのは難しいですね(笑)
日本ロシア学生交流会は毎週もしくは毎月決まった日に集まって、何か活動を行うといったサークルではなくて、例えば、「今度ロシア人が訪日するので来れる人」、「今度ロシア関係のイベントをするから手伝える人」のような呼びかけをして、イベント毎に都合がつく会員だけ集まって活動するという緩いサークルなので、どちらかというとコミュニティと言った方が近いかもしれません。
会員の中にはロシア語学習者はもちろん、法学部や医学部といったロシアと直接の関わりを持たない分野を学んでいる学生たちもいますしね!
僕自身、部活が週6であることもあって、なかなか活動に参加できる機会が少なかったんですが、そんな会員でも参加したいときに参加できるという、気軽さが会にはあります。
日本ロシア学生交流会には、日本とロシアの交流を行っている様々な団体からイベントのお誘いがあったりもするので、日本国内で日本とロシアの交流を行う学生団体としては最大規模じゃないかと思いますね。
--他の団体からイベントに誘われたりするということは、日ロ交流のハブのような存在にもなっているんですね!どういった団体のイベントに参加したりするんですか?
例えば、日本とロシアの青年交流を主として行っている日露青年交流センターさんであったり、少し日ロ交流からは外れるかもしれないんですが、北方領土問題対策協会さんのイベントなどですね。
北方領土問題対策協会さんは、北方領土に住まれている住民の方を50人ほど日本に招くといった事業を毎年行っているんですが、そこでいらっしゃった住民の方々を日本ロシア学生交流会の会員たちで案内するなどしています。
北方領土に関しては、毎年、2、3人の日本ロシア学生交流会の学生たちが訪問するなどもしているんですよ。
北方領土は誰でも行けるような場所ではないので、訪問は貴重な体験ではあるんですが、政治情勢に左右されることもあって、時期によっては上陸できない年があったりもするので、交流にはなかなか難しい部分もあるみたいですけどね。
--泉谷さんが日本ロシア学生交流会の代表をすることになったきっかけはなんだったんですか??
僕の代は会員が少なくて、僕自身が僕の前の代表のオオタさんとちょっとした縁があったことが代表をすることになった直接のきっかけですね。
ありがたいことではあるんですけど、いつのまにか代表になっていたような感じです(笑)
アメフト部に所属していたこともあって、最初は代表ができるかどうか、不安もあったんですが、良い意味での会の緩さに救われて、代表を務めあげることができました。
それまでは、代表というと行事ごとに毎回出席しなければならないというイメージがあったんですが、日本ロシア学生交流会では、全然そんなことはなくて、さっきも言ったようにとても緩かったんですよね(笑)
これはロシアにも共通する特徴かもしれないんですが、良い意味での緩さやいい加減さが会の中にもあるんです。
ロシアって、アメリカや中国なんかに比べると、日本のニュースでは取り上げられることの少ない国だと思うんですが、すごく存在感があって、僕の中では近すぎず、遠すぎずといった印象があるんですよね。
この近すぎず、遠すぎずという印象や雰囲気が日本ロシア学生交流会の会員同士の中にもあって、これが僕が代表になって気づけた、ロシアという国自体も含めて、すごく魅力的だと思っている部分です。
代表時代は、日本とロシアの交流に関わる活動として、あまりロシアマニア向けのイベントなどは開催できなかったんですが、キリル文字の読み方から始めるロシア語教室の開催やロシアの楽器・バラライカの演奏体験など、あまりロシアに詳しくない人も、ロシアに関心を持ってもらえるようなイベントを開催しました。
--ロシアに関心を持つ人の裾野を広げるという意味で、とても良いイベントを開催されたんですね!ちなみに、代表ならではの仕事とかってあるんですか?
代表になってからは大人の方とやり取りをすることが、すごく増えましたね。
代表になるまで、大人の方とメールのやりとりをする機会なんて全くなかったんですが、代表になってからは、イベントの関係などから、様々なシチュエーションで大人の方とやり取りする機会ができました。
日本ロシア学生交流会の代表ということで、自分が何か粗相をしてしまうと、会全体の信用の低下にもつながりかねないというプレッシャーがあるので、日々、代表として大人の方と接するときには、緊張感を持って接していましたね。
僕は部活もあるので、例年の代表に比べて、イベントへの参加回数が多い方ではなかったんですが、その分、様々な部分で幹事団のみんなにはすごく助けられました。
--やっぱり、代表の立場ってプレッシャーもありますよね…。交流を通じて発見したロシアの魅力などはあったりしますか?ほかにも心境の変化などもあれば!
自分の中では、まだまだ交流の途上ということもあって、なんとも言えない部分もあるんですが、この日本ロシア学生交流会に所属してロシアとの交流をすることができ、本当によかったなと思っています。
僕は、宇宙関係の仕事につきたいと思ったことがきっかけで、高校からロシア語を学び始めたと言ったと思うんですが、実際のところ高校時代はアメフトに熱中していたこともあって、アメフトが生活の全てになっていたんですよね(笑)
ロシア語の授業では真面目な生徒とは言えなかったと思います(笑)
僕の高校はアメフト強豪校で、色々な大会で、例年、優勝を争うような高校だったんですよ。
それが、僕が三年生の時には、都大会の早い段階で、負けてしまって。これが三年生最後の大会だったということもあって、このときに燃え尽きてしまい、色々と「もうどうでもいいや」って気分になってしまったんですよね。
そんな時に、授業でロシア語を教えてもらっていた福田知代先生という方から「ロシアに一緒に行かない?」、「ロシア人が日本に来るんだけど、都内散策しない?」といったふうに何度か誘っていただいたんです。
元々、そんなふうに生徒に声をかけて下さる先生だったんですが、僕は、当時暇だったこともあって、なんとなく行ってみようかという軽い気持ちでついて行ってみることにしたんですね。
これが思いのほか楽しくて、ロシアもロシア人もすごく面白いなと感じたことで、本格的にロシアに興味や関心を持つようになったんですよ。
ここから始まったロシアとの交流を通じて、友人も増えましたし、このことが大学でロシア語学科を選ぶことになったきっかけです。
失意にあった僕に新しい道というか選択肢のようなものを示してくれたのがロシアの存在といってもいいかもしれません。
--これまでロシアには何度も行かれていると思うんですが、印象に残ったエピソードなどはありますか?
やはり、初めてロシアに行ったときが一番衝撃的でしたね。
高校三年生のときに、福田先生に連れられて、12月のウラジオストクに行ったのが、初めての訪ロです。
そのとき、自分たちはものすごく分厚いコートを着て、靴も登山用のものを履いて行ったんですが、実際に行って現地の人を見ると、意外と薄着の人が多くて、スニーカーなんかで歩いている人もいたので、やはり流れている血が違うのかなと思いましたね(笑)
その時の気温がマイナス20°くらいだったんですが、現地の人が「今日は暖かい」と言っていたのは衝撃的でした。
また、ウラジオストクは距離的には沖縄よりも近いんですが、アジア系の人は少なめで、白人が多く、街並みもヨーロッパを思わせるような雰囲気だったので、「こんなに近くにヨーロッパがあるんだ」と思ったのも印象深いです。
距離も近いし、気軽にヨーロッパに行けちゃうなと思いましたね(笑)
--たしかに、こんなに近くにヨーロッパを感じられるっていうのはすごく衝撃的ですよね〜。ここからは直近の予定についてお伺いしたいんですが、来月、日本ロシア学生交流会さんも実行委員会に参画されているイベントがあるんですよね?ぜひ、ここからはそのイベントについて教えてください!
はい、日本ロシア学生交流会が中心となって参画している、「ロシア・ユーラシア文化祭『プラーズニク』実行委員会」が2月23日、24日に東京都内で、「ロシア・ユーラシア地域の文化に気軽に触れることができる」をコンセプトにした屋外イベント、「プラーズニク」を開催します。
これまでに日本ロシア学生交流会が中心となって開催したものとしては、ロシア語を学んだ学生が、社会人になってから、ロシアと無関係な人生を送るといった現状を打開することを目的とした「ミチター」というイベントなどがあるんですが、「プラーズニク」は一般の方を対象にロシア・ユーラシア地域の文化を知ってもらおうという趣旨のイベントです。
元々、僕の先先代の代表を務めていた木村冬馬さんが「都内では様々な国の地域文化に関するフェスがあるのに、ロシア・ユーラシア地域を対象としたフェスがない。じゃあ、やろう!」ということで決まった、今回が初開催のイベントでして。
東京都内ではベトナムフェスやカンボジアフェスといった海外の地域文化に関するイベントが定期的に開催されているんですが、そのロシア・ユーラシア版ということで、飲食店や雑貨の屋台の出店や舞台をメインに、ロシア文化体験ブースの設置などを行います。
舞台では、アニメ「ガールズアンドパンツァー」などに出演している声優のジェーニャさんや松竹芸能所属で、システマ芸人の南川さんらを招いて、ロシア・ユーラシアの魅力を伝えるパフォーマンスをしてもらうほか、民族舞踊や民族音楽などのアーティストの演奏も行っていただく予定です。
「プラーズニク」は港区にある芝公園という場所で行うので、ぜひ、ロシアやユーラシアに関心のない通りすがりの一般の方などにも気軽に来ていただいて、少しでもロシア・ユーラシア地域の魅力に触れてもらうというのがイベントの目標ですね。
今後2回、3回と続いていくようなイベントになればいいなと思っています。
--めちゃくちゃ楽しそうなイベントですよね!ぜひ、僕たちも遊びに行きたいです!最後の質問になってしまうんですが、泉谷さんの今後の目標やビジョンを教えていただいてもよろしいでしょうか?
日本ロシア学生交流会は代替わりして、今は一年生の子が代表を務めていることに加え、昨年は新入生が沢山入ってくれたこともあり、これからは活動のノウハウ等を下級生たちに少しずつ引き継げていければなと考えています。
下級生たちが安心して、活発に活動できるようにバックアップをしっかり行いたいですね。
「プラーズニク」についても、ノウハウを確立させることなども念頭に置きながら、なんとか成功させたいと思っています。
ぜひ、「プラーズニク」をよろしくお願いします(笑)
--こちらこそよろしくお願いします。少しでも力になれればと思ってます!今日は貴重なお話を本当にありがとうございました!学生ならではの視点で沢山のことを聞かせていただいて、とても嬉しかったです。「プラーズニク」も絶対行きますね!
泉谷知輝さんが代表を務められていた「日本ロシア学生交流会」と2月に開催される「プラーズニク」情報はこちらから
↓
名称:日本ロシア学生交流会
HP:http://nichiro.jpn.org/
Facebook:https://m.facebook.com/nichirogakuseikouryuukai/?refsrc=https%3A%2F%2Fwww.facebook.com%2F
イベント名称:ロシア・ユーラシア文化祭「プラーズニク」
公式HP:https://prazdnikjp.com
(インタビュアー/山地ひであき、大森達郎)