2021.01.27

【コラム】ロシア語講師の教える
『ロシアに関係するお仕事紹介』第9回『YouTubeへの動画投稿』

Columnist

福田知代

東京外国語大学を卒業後、フリーランスとして、ロシア語講師、通訳、翻訳家、YouTuberなど多彩な顔を持ち、今まで経験したロシア関連の仕事は10種類以上。都内で、誰でも気軽に参加できるロシア語教室「セラピオンロシア語学習会」を主宰している。

東京都内でロシア語講師や通訳・翻訳などのほか、YouTuberとしても活動されている福田知代さん『ロシアに関係するお仕事紹介』第9回です。

 

前回までの連載記事はこちらから
(以下、福田さんのコラムです)
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「日ロドライブ」の読者のみなさん、こんにちは。福田知代です。

連載も、今回で九回目となりました。
このシリーズでは、ロシア語を活かすことのできるお仕事のうち、わたしがフリーランスとしてこれまで経験してきた仕事や立場について、順番にお話ししています。

これまでに、①翻訳のお仕事②映像翻訳のお仕事③ロシア語を教えるお仕事④高校でのさまざまな国際交流プログラム⑤辞書編纂のお仕事⑥通訳のお仕事⑦大学でのお仕事⑧「コロナ禍」におけるロシア語のお仕事の状況(わたしの場合)についてお話ししてきました。
ご興味のある方は、どうぞそちらもご覧になってみてくださいね。

 

さて、連載もそろそろ終わりに近付いてきました。
今回は、「お仕事」と呼べるレベルにはまだ達していませんが、わたしの活動のうちの一つである、YouTubeへの動画投稿についてお話してみたいと思います。

 

YouTubeに動画を投稿し始めたそもそものきっかけは、2014年に私立の男子校を卒業した教え子たちのうち、わたしも含めた4~5人で何度か旅行に出かけるほど仲の良いグループがあるのですが(これまでに、金沢、伊豆、伊勢志摩に行きました。みんな就職してそれぞれ忙しくなったので、しばらく会えていないです)、あるとき、みんなでお好み焼きを食べに行った際に、そのうちの一人が、「ちよ(わたしのあだ名)、YouTubeやりな」と急に提案してきたのです。

よく話を聞いてみると、ロシア人のYouTuberは何人か有名な人たちがいて、たまにロシア語の文字を紹介していたり、挨拶表現を紹介していたりするけれど、「その先」をちゃんと教えている人はいない、ちよは先生だから、日本人学習者のために段階を追ってちゃんと教えられるはずだ、だからYouTubeやりな、みたいなことを言うのです。

そのときは、「ふーん、なるほど」程度に聞いていたのですが、少し経ってからまた考えてみると、たしかに一定の人たちには需要があるのかもしれない、と思うようになりました。

 

連載の第三回でも触れましたが、わたしは学部のときから教育学や教授法も学び、学校やロシア語教室で高校生からご年配までの生徒さんを相手に、入門から読解までのレベルを教えている経験が、実はけっこうある。
また、ときおり、「マンツーマンで教えてほしい」というお話をいただくことがあるけれど、お互いの時間や場所を都合するのも、なかなか簡単ではないなと感じていました。
それに、もしYouTubeに授業の動画をアップしたら、お近くにロシア語教室のない地域の方にとってもメリットかもしれないし、独学でロシア語を学びたい方が、必要な内容をいつでも好きなときに何度でも見直しながら無料で勉強できるのも、YouTubeの利点かもしれない、と考えて、授業の動画をYouTubeに投稿する方向で動き始めました。
それが2017年の夏でした。

 

同じく男子校の卒業生で、パソコン関係に詳しく、高校時代に動画を作成したこともある「きゅうり」くん(ロシア語Tシャツの動画に一緒に出ている子。ロシア系アパレルブランドвосток(ボストーク)を運営しています)を呼び、動画を作成するにはどうしたらいいか相談に乗ってもらいました。

チャンネル名は、NHKの「テレビでロシア語(現在はロシアゴスキー)」を参考に、「YouTubeでロシア語を教えているチャンネルなんだな」と、どなたにも一瞬で伝わるように「YouTubeでロシア語」にしました。
ほかの選択肢はなかったですね。

(福田知代さんのYouTubeチャンネル)

 

2017年の9月に最初の動画を投稿してから3年ちょっとが経ちました。
文字の読み書きから、最近では学校で使ったビデオ授業のまとめ動画までのさまざまな授業動画や、国後島、ウラジオストクを訪れたときの動画、ロシア語の絵本の読み聞かせ動画、ロシア大統領の年頭挨拶に関する動画など、いろいろな種類の動画を投稿してきました。

最近ではあまり時間が取れず、投稿の間隔が空いてしまっていますが、それでも新しい動画を待っていてくださる温かいみなさまに支えられて、チャンネルを継続できています。
いつもまことにありがとうございます!

 

YouTubeのチャンネルを持っていると、どの時間帯によく見られているか、どの年代の方によく見られているかなど、チャンネルに関するさまざまな分析結果を見ることができます。
その中に、国ごとの集計もあるのですが、日本で視聴されているのは、全体の80%くらいで、残りの20%は、ロシアやウクライナ、それに、タイで視聴されているようです。

「何をしゃべっているか分からないけれど、笑顔が見られて嬉しいです」というコメントをたくさんくださるロシア人の視聴者さんもいて、まだまだ小さなチャンネルではありますが、動画を投稿しはじめた当初は考えてもみなかった反応が国境を越えて届くのが、「これぞYouTube!」という感じがして、わたしも楽しませてもらっています。

 

ここからは、YouTubeをご覧のみなさまから寄せられたご質問に、いくつかお答えしたいと思います。
YouTubeの方でも、ご質問にお答えする動画を投稿しようと思っておりますので、どうぞ気長にお待ちください。

Q.ロシア語の他に話せる外国語はありますか?また、話してみたい外国語はありますか?

話すことができるのは、(日本語と)ロシア語だけです。
勉強したことがある言語は、英語とスロヴァキア語です。
そのほか、勤めている・勤めていた学校では複数の言語が開講されているため、職員室でほかの言語の先生が話しているのを聞いたり、外国人生徒が職員室にやって来た際の対応などで、中国語、韓国語、フランス語でいくつかのフレーズを言うことができるといった感じです。

 

Q.ロシア語の単語、スペル、文法の暗記方法について、どのような方法で学習しましたか?覚えるコツはありますか?不規則動詞を覚えるいい方法はありますか?

大人がスペルを覚えるには、大きく分けて三つの方法があります。
目で見て覚える方法耳で聞いて覚える方法(+発音して覚える方法)手で書いて覚える方法です。

目で見るというのは、スペルを形として認識するということです。
さらに、単語を見たときに、その単語の発音が頭の中で再現されるように、耳で聞くことも必要になります。
視覚と聴覚の両方を使うことで、より記憶に留まりやすくなります。
「聞き流す勉強法」というものもありますが、記憶するためには、意識的に聞き、自分で繰り返して発音するのがよいと言えるでしょう。

そして、実際に自分の手で何度も書いてみることです。
視覚的、聴覚的にある程度覚えてしまっていれば、акноではなくокно、жлналではなくжурналであると自分で間違いに気が付くことができると思います。

単語の意味を覚えるときは、もちろん、はじめのうちはたくさん努力することが必要です。
中級レベルになると、日本語の熟語のように、ロシア語の長い単語も、いくつかの要素が組み合わさって成り立っていることに気付くことができるようになります。
そうすると、語彙が一気に増えてきます。

努力して意味を覚える段階でも、いろいろな工夫をすることができます。
たとえば、語呂合わせを考えてみたり、その単語を勉強したときの状況記憶と組み合わせたり、どうしても覚えにくい単語をカードにして持ち歩いたり。
無機的な作業ではなく、強度に差を付けたり、単語の周辺に物語を感じることができると、より記憶に留まりやすくなると思います。

文法や変化に関しては、なるべく早い段階で一通り覚えてしまうのが、後々のことを考えると効率的かと思います。
母語でない限り、「自然に覚える」というのは難しいでしょう。
ですから、スペルを覚えるときと同様に、見て、聞いて(唱えて)、書いて努力して覚える段階が、必ず必要になると思います。
後回しにしていくと、その分、苦手意識が加わってしまうかもしれませんので、「ロシア語は格変化が鬼らしい!」「一つの動詞がものすごい数に変化するらしい!」といった、不安を煽るようなうわさを知ってひるんでしまう前に、「なるほど、こんな感じなんだ」と素直に努力して覚えるのがよいと思います。

 

Q.年齢を重ねても、ロシア語を習得することができますか?

もちろん、可能です。
わたしが主宰しているロシア語教室にも、年配の生徒さんが何人もいらっしゃいます。
その生徒さんを拝見している中で、いくつかの傾向があるように思います。

まず、学生時代や若いころに、外国語を一つ完璧にマスターした経験のある方は、その後、年齢を重ねたのちに新しい言語を勉強なさっても、勉強のコツや努力する方向をよくご存知で、勘がよく働くため、比較的はやく上達なさいます。

また、会話に関して言えば、ふだんから日本語でもよくおしゃべりするタイプの方(おしゃべりが好き、伝えたいことがたくさんある方)は、外国語でも積極的にお話をしようとなさるので、上達がはやいです。
さらに、強い興味・関心をお持ちの方は、それだけ学習へのモチベーションが高いので、ちょっとやそっとのことではへこたれません。

あとは、性格の面も関係していると思います。
コツコツと細く長く継続することのできるタイプの方、「諦めの悪い方」、変に近道をしようとしない方、あれこれと手を広げすぎない方は、きちんと「ロシア語の階段」を上ることができているように思います。
また、年齢を重ねても何らかの学習を続けられている方は、認知症になりにくいという付加的な効果もありますので、諦める手はありません。

年齢を重ねてからロシア語を学ばれている生徒さん方が直面している問題として、覚えるのに時間がかかる、目が疲れやすくなった(細かい文字が見えづらい)というものをよく耳にします。
記憶がしづらくなるのは、避けられないことではありますが、上に紹介しました単語、スペル、文法の暗記方法をご活用いただき、「諦め悪く」コツコツと継続なさるのがよいと思います。

辞書の字が小さくてお困りの方は、iPadに電子辞書を入れてお使いになるのをおすすめいたします。
文字を大きくしたり、ワンタッチで発音を聞いたり、例文の中の単語を一瞬で調べられたりと、メリットは多いですよ。

 

以上、今回はロシア語を活かすことのできるお仕事のうち、YouTubeへの動画投稿についてお話ししてみました。
次回もどうぞお楽しみに。

 

 

 

(文/福田知代/ロシア語講師、翻訳家、通訳、YouTuber)

福田知代さんの運営されているロシア語教室「セラピオンロシア語学習会」についての情報はこちら

HP:http://serapion2008.web.fc2.com/

福田知代さんのYouTubeチャンネル「YouTubeでロシア語」はこちら

https://www.youtube.com/channel/UC77TaAKL6jHRMpU_-AGtnPQ

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