2020.12.26

【コラム】ロシア語講師の教える
『ロシアに関係するお仕事紹介』第8回『「コロナ禍」におけるロシア語のお仕事の状況』

Columnist

福田知代

東京外国語大学を卒業後、フリーランスとして、ロシア語講師、通訳、翻訳家、YouTuberなど多彩な顔を持ち、今まで経験したロシア関連の仕事は10種類以上。都内で、誰でも気軽に参加できるロシア語教室「セラピオンロシア語学習会」を主宰している。

東京都内でロシア語講師や通訳・翻訳などのほか、YouTuberとしても活動されている福田知代さん『ロシアに関係するお仕事紹介』第8回です。

 

前回までの連載記事はこちらから
(以下、福田さんのコラムです)
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「日ロドライブ」の読者のみなさん、こんにちは。福田知代です。

連載も、今回で八回目となりました。
このシリーズでは、ロシア語を活かすことのできるお仕事のうち、わたしがフリーランスとしてこれまで経験してきた仕事や立場について、順番にお話ししています。
これまでに、①翻訳のお仕事、②映像翻訳のお仕事、③ロシア語を教えるお仕事、④高校でのさまざまな国際交流プログラム、⑤辞書編纂のお仕事、⑥通訳のお仕事、⑦大学でのお仕事についてお話ししてきました。
ご興味のある方は、どうぞそちらもご覧になってみてくださいね。

 

さて、今年ももうおしまいですね。
2020年は、新型コロナウイルスの大流行で、世界中の人々が、これまでとは異なる新しい生活スタイルを取り入れざるを得なくなりました。
みなさんとみなさんの周りの方々に、お変わりはありませんか。
幸い、わたしは今のところ健康に過ごせております。

 

そのようなわけで、今回は、一年を振り返りつつ、「コロナ禍」におけるロシア語のお仕事の状況(わたしの場合)について、書いてみたいと思います。

 

ロシア・ユーラシア文化祭「プラーズニク」でのミニ・ロシア語教室

新型コロナウイルスが武漢で流行し、横浜に停泊していたダイヤモンドプリンセス号の船内で感染が広がっているとのニュースが出たのが、一月下旬から二月初めだったでしょうか。
この時期は、高校は通常通りの授業が行われており、わたしが主宰しているロシア語教室も、特に変わりなく開講していました。

2月23、24日に東京の芝公園で行われた、日本ロシア学生交流会主催のロシア・ユーラシア文化祭「プラーズニク」は、世の中が自粛ムードに突入する前の、最後の大きなイベントとして記憶に残っています。
わたしは「プラーズニク」が行われた二日間、会場内に設けられた、中央アジアの遊牧民の移動式住居「ユルタ」内で、計6回、ミニロシア語教室を開講しました。
YouTubeやTwitterであらかじめお知らせしていたため、YouTubeの視聴者の方が駆けつけてくださったり、たまたま来てくださった方が、わたしの顔をじーっとご覧になって、「あ、YouTubeで見たことがあります!」とおっしゃってくださったり、新しい出会いがたくさんありました。
一緒にお写真を撮ったりもし、YouTuberとして?初めていろいろな方々と触れ合うことができたイベントでした。
新型コロナウイルスが収束し、またみなさんとお会いできる機会を作れたらいいなと思います。

 

二月の最後の平日に、都からの通達で、三学期の残りは休校となることが急遽決まりました。
わたしが教えている都立高校では、ロシア語の授業は基本的に二年生までのため、まだあと数回ロシア語の授業があると思っていた二年生の生徒たちは、突然の出来事に戸惑いつつも、一瞬だけみんなで教室に集まって、一緒に記念写真を撮り、簡単に別れの挨拶をしてすぐに帰宅していきました。
私立高校の方は、わたしは三年生しか受け持っておらず、三学期の授業はないため、わたし自身は大きな影響はありませんでした。
その後は、どちらの学校も学年末試験を実施することができず、卒業式は中止か、規模を縮小して行われました。

昨年の九月からロシアやその他の国に留学していた生徒たちもいましたが、状況の悪化により帰国を余儀なくされ、後ろ髪を引かれる思いで三月中には日本に戻ってきました。
同じく留学生の身分で海外にいた卒業生たちも、取るものも取り敢えず、名残を惜しむ余裕もないままに帰国したそうでした。

 

ロシアの連続ドラマ「メソッド」の翻訳

ちょうど「プラーズニク」の直前に、映像翻訳会社からロシアの連続ドラマの翻訳の依頼があり、およそ一か月かけて5話分を翻訳しました。
三月はなかなか外に出かけられない時期でしたので、家でコツコツと翻訳をするにはもってこいでした。
ドラマ自体が大変おもしろく、また、家での作業が捗りすぎたため、当初は4話分を担当する予定でしたが、「おかわり」でさらにもう一話を翻訳しました。
このときに翻訳したのは、ロシアの実力派人気俳優コンスタンチン・ハベンスキーが主演を務めた、全16話のサスペンスドラマ「メソッド」で、U-NEXTで2022年の10月まで配信されているそうです。
わたしは8、10、12、13、16話を担当しました。
それぞれ、翻訳者の名前が最後にクレジットされているそうなので、どうぞ最後までご覧になってくださいね!

ちなみに、ドラマの翻訳あるあるなのですが、今回は8話から担当したように、急に途中からを割り振られるパターンがほとんどです。
登場人物の人間関係が分からず(今出てきたのは、一体だれ…?となったり)、また、それまでのいきさつも分からない状態(これは前のどこかの回想シーン…?となったり)でスタートするので、最初は頭の中が混乱して、情報の整理に時間がかかりますが、それもまた一興。
今回は最終話も担当したので、結末を知ることができ、すっきりしました。

今回翻訳したドラマ「メソッド」の主演コンスタンチン・ハベンスキーは、以前に翻訳した映画「エターナル 奇蹟の出会い」という映画でも、ハリウッド女優ミラ・ジョヴォヴィッチとともにダブル主演を務めていますので、気になる方はぜひこちらもチェックしてみてくださいね!

 

YouTuberとしての活動。オンライン授業の開始

三月下旬にドラマの翻訳が終わって手が空き、学校も休校(というか春休みというか)、ロシア語教室も三月初めには無期限で休講にすることにし、家にこもっているだけの日が続いたので、三月末から立て続けにYouTubeをアップし、この期間に二度目のライブ配信もしてみました。
「自粛期間で家にいるので、これを機に、これまで興味のあったロシア語の勉強を始めることにしました」というコメントをくださった方々もいらっしゃいました。
少しでもみなさんのお役に立てるのでしたら幸いです。

 

その後、私立高校は五月半ばからオンライン授業を開始することになりましたので、それに合わせて、週に二本授業動画を作成するという日々になりました。

オンライン授業といっても、方法はそれぞれの教員に委ねられていて、課題のやり取りをするか、zoomなどでライブ授業を行うか、あるいは授業動画を作成してアップロードし、動画内で指示する課題をやってもらうか……といった方法が考えられましたが、わたしは、YouTubeに授業動画を投稿しているので、まあ同じような感じでやればいいか、ということで、授業動画を作成してアップロードすることに決めました。

わたしは三年生しか受け持たないので、担当する生徒たちのうち、会ったことのない生徒も多く、それぞれの生徒たちのロシア語の実力も分からない状態でオンライン授業が始まったため、レベルの設定や、何をどのくらい丁寧に説明したらよいのかなど、本当に試行錯誤が続きました。
このときの授業動画をYouTube用に再編集してアップロードしていますので、入門レベルの授業動画では飽き足らない!という方は、どうぞそちらもご覧になってみてください。

 

オンライン授業のための授業動画の作成をしていた五月半ばに、昨年からつながりのあった日ロドライブさんからコラム連載のお話を頂戴し、月一回の連載がスタートしました。
コラムのほか、インタビューに関するご提案などもさせていただき、このような時期に新しい経験をさせていただけていることに、大変感謝いたしております。

 

六月の半ばに登校が再開され、お仕事は例年とほとんど変わらない状況になりました。
私立高校で登校再開後に初めて生徒たちと会い(生徒たちはすでに画面の中のわたしと「出会って」いましたが、わたしが生徒たちと会ったのはこのときが初めてでした)、授業動画の感想を聞いたところ、これまで二年間ずっとロシア語が苦手だったという生徒が、動画だと一時停止できたり、戻って確認したり、何度か見直したりできるので、とても勉強しやすかった、と言ってくれました。

編集の手間で心が折れそうになったときもありましたが、生徒の役に立てたのならよかった、と苦労が報われたような気がしました。
ちなみに、この生徒はその後も授業を熱心に受け、試験前も努力したようで、比較的よい点数で学年末試験を終えることができました。

今年は春休みが長くなったために、夏休みはとても短くなりましたが、二学期以降は例年とほとんど変わらない状況でした。
文化祭や体育祭は、密を避けるために延期になったり、オンラインで開催されたりなど、新しい試みも行われました。

 

日露青年交流センターを通じた日ロ学生のオンライン交流会

本来であれば、毎年11月初めに、日露青年交流センターを通じて、ロシアで日本語を学んでいる高校生たちと引率の先生方が来日し、都立高校と私立高校を訪問したり、バスツアーで都内を巡ったりする一大イベントがあるのですが(連載第四回「高校でのさまざまな国際交流プログラム」をご参照ください)、今年はこれがかなわず、代わりに日露青年交流センターが企画してくださったオンライン交流会が二日間かけて実施されました。

ロシア在住のロシア人高校生10人、日本の各地の高校生10人がzoomを通じて交流し、自分たちが暮らす地域を発表し合ったり、昨晩の夕食の写真を紹介し合ったり、将来の夢を語り合ったりなど、非常に有意義な交流となりました。

わたしの生徒たちに関しては、都立高校と私立高校の観覧希望生徒たちを一か所に集めてzoomの画面をパブリックビューイングするというスタイルを取り、代表生徒ではない「外野」の生徒もわいわいと喜んでいました。
zoomを通じた交流ではありましたが、最後には双方がInstagramを交換し合うまでに親しくなれていたのが大変印象的でした。

 

北方領土の元島民さんとのオンライン対話会

やはり今年は、密を避けるために、「オンライン」「リモート」がテーマだったかと思いますが、もう一つ、12月半ばには、独立行政法人北方領土問題対策協会が主催してくださった、北方領土の元島民さんとのオンライン対話会が実施されました。

このオンライン対話会の事前学習のため、授業内で映画「ジョバンニの島」を鑑賞し、生徒たちが北方領土問題をより深く知るための機会を作りました。
オンライン対話会当日は、代表以外の生徒たちも元島民さんのお話を熱心に聞き、それぞれがこの問題について改めて深く考えるきっかけとなりました。
難しい状況の中で、生徒たちのためにオンラインで交流したり学んだりする機会を作ってくださいました日露青年交流センター、北方領土問題対策協会に、改めて御礼申し上げます。

 

今後の予定等について

主宰しているロシア語教室は、10月に授業を再開したしましたが、年明けからはまたしばらく休講とし、状況を注視したいと思っております。
いずれ、オンラインで授業を行えるようにできれば、と考えておりますが、まだ少し先になりそうです。一般の方もご参加いただけるような仕組みができましたら、またホームページでお知らせしようと思います。
みなさんはどのような一年を過ごされたでしょうか。
新型コロナウイルスが一日も早く収束し、世界中にこれまでのような心の休まる生活が戻ってきますように。

 

以上、今回はコロナ禍におけるロシア語のお仕事の状況(わたしの場合)について書いてみました。
С наступающим Новым Годом!
みなさんどうぞ良いお年をお迎えください。
次回もどうぞお楽しみに。

 

 

 

(文/福田知代/ロシア語講師、翻訳家、通訳、YouTuber)

福田知代さんの運営されているロシア語教室「セラピオンロシア語学習会」についての情報はこちら

HP:http://serapion2008.web.fc2.com/

福田知代さんのYouTubeチャンネル「YouTubeでロシア語」はこちら

https://www.youtube.com/channel/UC77TaAKL6jHRMpU_-AGtnPQ

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