2020.10.30

【コラム】日露文化オーガナイザー・中川亜紀の
『お皿の上のロシア』 第6回『きのこのマリネ』

Columnist

中川亜紀

日露フードオーガナイザー、a.k.i. kitchen project代表。日本人向けロシア料理教室、およびロシア語話者向け和食教室を主宰。東京都教育委員会委託ロシア語児童の日本語講師およびサポート員として都内の小中学校にて指導もしている。「食は異なる文化の人々をつなぐ」をテーマに、日本とロシア(および旧ソ連圏)を食でつなぐ活動を続けている。

日本とロシアを股にかけて、「食」をテーマにした文化交流活動を行っている日露文化オーガナイザー・中川亜紀さんの料理と文化に関するコラム「お皿の上のロシア」全12回シリーズの第6回です。

 

前回までの連載記事はこちらから
(以下、中川さんのコラムです)
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ロシアの秋はたくさんの美味しいものと一緒に、行きつ戻りつしながらあっという間に深まっていきます。

『黄金の秋』と呼ばれ、どこを切り取っても絵になるような季節。
今年は残念ながらその季節はコロナ渦のうちに過ぎてしまいましたが、待ちに待ったニュースが先日流れました。

ロシアが日本に限定して国境を開きました。
飛行機の直行便もロシアのアエロフロート便が週に2便になり、JALも2週間に1回だったものを、週1便に戻すようです。

また年明けからはロシア全土の電子ビザ化のニュースもありました。
まだまだロシアは第二波で落ち着きませんが、状況をみながら、ロシア行きの夢を見てもそろそろ良いかもしれません。

 

(写真:ロシアの『黄金の秋』)

 

(写真:中川亜紀さん。『黄金の秋』を迎えたロシアの町角にて)

 

「せっかくロシアに来たら、何を食べるべきでしょうか?」という質問はよくあります。

キャビア?
今時は日本で食べた方が安くて良いものだったりします。
ビーフストロガノフ?
いいですね、でもお店によってアレンジがたくさんありすぎて、結局どれが典型的なものか知るには、あと何度も行った方がいいかもしれません。
ボルシチもしかり。
家庭ごとの味の違いを何度も足を運んで楽しんでください。

しかし、ロシアへの往復航空券代を使ったのなら、ぜひおすすめなコスパ高し!な食べ物、実はそれはロシアのきのこです。
代表的なものをご紹介しましょう。

 

1.ベールィ・グリビィ(白きのこ)

こう言われるとわからないと思いますが、これはいわゆるポルチーニのこと。
ロシアでも高級きのこではありますが、きのこ狩りに友人や家族ででかけ、「特大サイズが見つかった!」などと 大喜びの様子がメッセージで送られたり、SNSの写真などでもよく見かけます。
市場などでもフレッシュなものを買えます。
お土産に干したものがおすすめ。

 

2.リシーチカ(きつね茸)

これもかわいらしい名前ですが、いわゆるジロール。
日本では高級フレンチに行くと、付け合わせにちょろっと乗っているあれです。
しかしロシアでは普通にスーパーや市場で売られていたり、田舎でバケツで売られていたり。
豪快にバターを溶かしたフライパンでたっぷり炒めて、 じゃがいもと一緒に食べるのが最高。

 

3.マスリャータ

なめこによく似た食感のぬめりのある、大きなきのこ。
マリネやスープなどに入れるととろみになって独特の風味に。
他にも『アピャータ』というしめじによく似たものなど、いろいろありますが、どれも、マリネにして瓶詰めにするか、冷凍保存、あるいは乾燥させて少しずつ使い、長い冬の貴重な食材になります。
特にきのこのスープは、いろいろな種類のきのこをたっぷり使い、チキンベースのブイ ヨンで煮込んだり、最近はポタージュも流行(※ポタージュはもともとロシア料理にはないため、 欧米からの輸入文化として)しています。

 

お仕事で、オリガルヒと呼ばれる大富豪のお宅にお邪魔したことがありましたが、冷凍された白きのこを惜しげもなく使ったスープのレシピをそこのお母さんに教えてもらったこともありました。

それぞれの家族にとって、その年のきのこの収穫の出来は自慢のたねのようです。
またそれをいかにおいしくお皿の上に乗せるかも、腕のみせどころ。

そんな雰囲気を味わっていただきたく、日本でも気軽に楽しめるきのこの保存食のレシピをご紹介します。
きのこは日本のものでも、スパイス使いでロシアの味を通して、豊かで美しいロシア の黄金の秋をお楽しみください。

 

 

“きのこのマリネ”(きのこのマリネのサラダ лесной салат с маринованными грибами)のレシピ

(写真:きのこのマリネ)

 

【材料】

きのこ類 合わせて500g (しめじ、えのき、しいたけ、エリンギ、株なめこがおすすめ)
玉ねぎ 1/2個
サラダ油 大さじ1
黒こしょう(ホール) 3~4粒
ディルシード 小さじ1/2
マスタードシード 小さじ1/2
クローブ 3~4個
シナモン 小さじ1/3 (スパイスは、GABAN「ピクリング・スパイス」で代用可)
ワインビネガー 100cc
水 800ml
砂糖 30g
塩 40g
ジャガイモ 2~3個
きゅうりのピクルス 大1本
青ねぎ 1~2本
塩、こしょう

 

【作り方】

1. きのこのマリネ液を合わせて鍋で一煮立ちさせる。

2. きのこを小房に分け、さっと洗う。塩を入れて湯を沸かした鍋にさっと入れてすぐにざるにあげる。

3. マリネ液に2のきのことスパイス、ローリエを入れ10~15分煮立たせる。

4. 耐熱の瓶の底に玉ねぎを入れ、サラダ油大さじ1を垂らしておいておく。そこへ3のきのこを入れてふたをして保存する(冷蔵庫で2~3週間保存可能)。

5. じゃがいもを皮ごと茹でて、ゆであがったら皮をむき1cm太さの拍子切りにする。

6. 荒みじん切りにしたきゅうりのピクルス、小口切りの青ネギ、じゃがいも、きのこのマ リネを合わせ、塩こしょうで味をととのえて皿に盛る。好みで細ねぎやディルを加える。

 

 

 

文/中川亜紀/日露文化オーガナイザーとして、ロシア料理の研究のほか、ロシア語通訳・ロシア語児童支援などの活動を行っている)

中川亜紀さんのHPはこちらから:http://www.aki-russia.jp/

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