日本とロシアを股にかけて、「食」をテーマにした文化交流活動を行っている日露文化オーガナイザー・中川亜紀さんの料理と文化に関するコラム「お皿の上のロシア」全12回シリーズの第9回です。
前回までの連載記事はこちらから
(以下、中川さんのコラムです)
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今年はモスクワでもたくさんの雪が降っています。
私が駐在していた3年間でも、マイナス20度を超えるのは数日でしたが、今年もモスクワにしては珍しく、氷点下20度を超える日が続いたようです。
子供たちが通っていた日本人学校でも、休校や短縮授業などの措置が取られます。
現地のロシア国立幼稚園でも、氷点下15度を超えると、外遊びは禁止になります(逆に言えば、それ以上であれば毎日雪遊びなどしています)。
マイナス30度を超えた時にしかできない遊びは、濡らしたタオルを窓から出して振り回すこと。
カチカチに凍って物が叩ける硬さになります。
それから、窓からシャボン玉を飛ばすこと。玉になった途端パリパリに固まって落ちて割れます。
そんな真冬のロシアにぴったりな、熱々で頂くキエフ風チキン。最近はミニストップでも「チキンキエフ」として販売が始まりましたね。
中からバターが溶け出すジューシーなチキンは、お家でのおもてなしや家族の夕飯にもぴったりです。
ほんの少し手間はかかりますが、ナイフを入れた時に、ハーブ香るバターが溶け出した時に上がる歓声は、作り手の苦労も吹き飛びます。
鶏肉一枚肉で作るのは慣れと技術が必要ですが、ご家庭でも作りやすいように、ひき肉を使ったレシピにしています。
飾りになる手羽元も、場合によっては、無くても構いません。
ただし、一枚肉と違って、ひき肉の場合は、温度や提供するタイミングがずれると、せっかくのバターがひき肉に吸収されてしまいます。
焼きたて熱々をすぐにお皿に盛って出せるように、他のお料理の準備なども万全にして、オーブンの火加減を調整してみてください。
さて、最近ロシアのニュースといえば、反プーチン派の野党指導者ナワリヌイ氏の拘束ビデオではないでしょうか。
政治的意見はともかく、興味深いのは、このナワリヌイ氏(ロシア語でより近い発音は“ナヴァリヌィ”)のSNS投稿が大変よくできていることです。
私はインスタグラムで、ナワリヌイ氏およびその妻のユリア・ナワルナヤ氏のアカウントをフォローしています。
国民の中の彼らの支持者たちは、ナワリヌイ氏を応援する画像やメッセージに、彼らをタグ付けして投稿しています。
ナワリヌイ氏の妻のユリアさんは、それらをストーリーズでシェアし、支持者の応援の様子がよく伝わってきます。
そもそも、ナワリヌイ夫妻のアカウントには、日頃から、夫妻の仲睦まじい様子、また子供たち2人を含む、金髪で青い目の美しい、ロシア人家族のお手本のような姿がよく見られます。
妻のナワルナヤ氏はただ美しい妻というだけでなく、スタイリッシュで知的、意志の強い凛とした女性像がしっかりと描かれており、マスコミにも気高く応じる姿が見受けられます。
それでいて、今回夫が拘束される瞬間、また、昨年、毒薬による暗殺未遂事件でも、ナワリヌイ氏が瀕死の状態から回復し、家族と再開した際などは、強く抱きしめ合う夫妻の様子が大きく報じられ、彼らのアカウントでも拡散されました。
政府に抵抗することで大きなリスクを背負う英雄と自らの危険をも顧みず夫を支える勇敢な妻と、その危険にさらされる美しい一家。
私の多くの知人友人を含む、普段政治にもあまり関心を示していなさそうなロシア人たちも、このナワリヌイ氏には共感を示しているという点が非常に興味深いところです。
日本語で伝わってくるニュースだけでは表層に偏りがちですが、インスタグラムなどでフォローしてみると、また見えてくるものも違ってくるかもしれません。
日本版キエフ風チキンを手軽にコンビニで味わいつつ、ご自宅で本格派にもぜひチャレンジしてみて、その差を感じてみてはいかがでしょうか。
“小さな骨つき本格キエフ風チキン”
Котлета по-киевски
【材料(4人分)】
鶏手羽元 4本
パン粉 適宜
鶏ひき肉 240g
小麦粉 適宜
卵 1個
有塩バター 50g
塩 小さじ1/3
ディル 適宜
玉ねぎ 1/2個
オリーブオイル 大さじ1
【作り方】
1. バターを室温に戻し、ディルのみじん切りを混ぜて牛乳パックの底などの箱にラップを敷いて敷き詰め、冷凍庫で再び固める。
2. ひき肉に、おろした玉ねぎ、卵、塩、こしょうを加えてしっかりこねる。
3. 手羽元は骨をひっぱってひっくり返し、塩こしょうをしておく。
4. 1のバターを棒状に切って、2のひき肉を4等分にした分量の真ん中に埋め込む。さらに手羽元の中に入れて成形する。
5. パン粉におろしニンニク、オリーブオイルを加えて全体むらなく混ぜておく。
6. 小麦粉を水でのばしたのりに4をからめ、次に5のパン粉をまぶす。
7. オーブンシートもしくはアルミホイルをしいた天板に乗せて、190度で25分ほど焼く(串をさして、透明な肉汁が出たら火が通っている)。
8. 冷めると中で溶けたバターを肉が吸ってしまうので、熱々のうちに盛り付けて食べる。
(文/中川亜紀/日露文化オーガナイザーとして、ロシア料理の研究のほか、ロシア語通訳・ロシア語児童支援などの活動を行っている)
中川亜紀さんのHPはこちらから:http://www.aki-russia.jp/
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